我が家で育てている食虫植物
ハエトリグサひとつみても、“ウツボカズラ目モウセンゴケ科ハエトリグサ属”のハエトリグサらしい。どうやら植物の世界は複雑だ。ハエトリグサは絶滅危惧Ⅱ類(VU:Vulnerable)でもあるらしい。絶滅危惧種でも販売や飼育ができるのは条約や法律で規制されていないからだ。とはいえ、貴重な生きものであることに変わりはない。
比較的容易な育て方
そして、太陽。直射日光が当たりすぎるのは良くないけど、太陽は好き。我が家の場合、夏でもベランダに置いたままだけど元気に育っている。
出張が多い身なので、特に夏の水やりが不安だったけど、パートナーに協力して貰ったり、たっぷり過ぎるくらいの水をあげることでなんとか乗り越えて今も元気に育っている。
ちなみに、ハエトリグサの場合、冬は休眠するらしく、そのまま外に出しておこうと思っている。我が家に来て初めての冬。果たして無事に乗り越えられるか。1月か2月には年に1回の植え替えにも挑戦したい。モウセンゴケも寒さには強いらしく、外に出しっぱなしだ。
この3種のなかで、ウツボカズラは寒さに弱いので、外の気温が20度を下回るくらいになったら家のなかにいれたほうが良いそうだ。今年は一気に寒くなったこともあり、10月には家の中にいれている。
ハエトリグサの天敵昆虫
というわけで、故意に虫を与えたい気持ちを我慢しつつ控えているのだけれど、ベランダに置いておくと、21階という高層階にもかかわらず、ときどき勝手に捕虫しているから興味深い。
ただ、これまで、捕虫後に葉が閉じたまま黒くなり、結局は枯れてしまう現象が複数回起きたのだ。興味本位で黒くなった葉のなかを開けてみると昆虫が死んだまま消化もされておらず、喧嘩両成敗の様子。
気になって調べてみると、どうやらハエトリグサには苦手な昆虫がいることがわかってきた。
その1.アリの仲間
7月、我が家のハエトリグサが初めて捕虫したのが羽アリ(羽がついたアリ)だった。繁殖期になるとアリは羽がついて、飛べるようになるらしい。どうやら21階の我が家に迷い込んだまま残念ながらハエトリグサの餌食になったようなのだ。
何もしていないのに葉が閉じていることを不思議に思い、葉を光にかざして見たら、まさに羽アリがそのままの形で閉じ込められていて、しかもまだ葉っぱのなかで動いていた。
が、しかし、1週間もしないうちに葉っぱの一点が黒くなりはじめ、だんだんと黒い部分が広がってそのまま枯死。
黒くなりはじめたハエトリグサの葉
どうやら蟻酸というアリがもつ酸の影響らしいのだ。ちなみに、「蟻酸」と書いて「ギ酸」と読むらしい。
カルボン酸の一種であり、メタン酸ともよばれる。最初にアリの蒸留により得られたので、ラテン語のアリformicaにちなんで名づけられた。化学式HCOOH、分子量46.0。常温では無色の刺激臭のある液体で、皮膚に触れると水疱(すいほう)を生ずる。天然にはアリのほかにイラクサなどの植物にも含まれていて、イラクサに触れると皮膚がひりひりするのはギ酸によるといわれている。沸点100.8℃、融点8.4℃。水、エタノール(エチルアルコール)、エーテルによく溶ける。分子内にカルボキシ基(カルボキシル基)とアルデヒド基の両方をもつので、酸性と還元性を持ち合わせている。酸性は酢酸よりはるかに強い。工業的には、高圧下で一酸化炭素と水酸化ナトリウムとを反応させてギ酸ナトリウムをつくり、硫酸で酸性にすると得られる。いろいろな有機試薬や溶剤の合成、染色、皮なめしなどに用いられる。高等植物の種子や芽生えの子葉などに含まれるギ酸脱水素酵素により、ギ酸は二酸化炭素に分解される。
引用:コトバンク「ギ酸とは」2021.12.07.検索
その2.カメムシの仲間
夏の盛りと終わりごろの2度にわたり、ハエトリグサの葉っぱの裏に白い粒々がついていた。見た目にもなんとなく気持ち悪いその粒々は、何かの昆虫の卵であることはわかっていたのだけれど、なんの卵かわからなかったので、ひとまず観察することにした。
数日して卵から出てきたのはなんとカメムシだった。そして、そのほとんどは葉っぱを移動中にハエトリグサの餌食になったのだ。
しかし、カメムシを飲み込んだハエトリグサもアリと同じく次第に黒くなり喧嘩両成敗の様相。この秋には成虫のカメムシが同じく餌食なったのだけど、アリよりも早く葉が黒くなりはじめて枯れてしまった。
カメムシはあの臭いの成分を体内に秘めているわけで、どうやらハエトリグサはカメムシにも弱いらしい。人間同様、あの悪臭には耐えられないようだ。
カメムシ類は世界中で少なくとも約80科42,000種以上存在すると言われ,昆虫の中で最も多様性に富んだグループのひとつである.<中略>その最大の特徴は,(E)-2-hexenalや4-oxo-(E)-2-hexenal(OHE)に代表される炭素数6‒10のα,β-不飽和アルデヒド類やそのアルコール,エステルといった類縁化合物,またhexanalなど飽和のアルデヒドとその類縁化合物,炭化水素など複数の成分からなる臭気を生産・放出することである(Fig. 1).これら臭気成分は,外敵から身を守る防御物質として,また,性・集合・警報フェロモンとして同種間のコミュニケーションに役立つ.<中略>カメムシはビンに閉じ込めておくと自らのにおいで死に至ることがある.
引用:野下浩二,2015「カメムシ臭気成分の化学生態学的研究」『日本農薬学会誌』,pp152‒156.
どうやらカメムシはカメムシでとても興味深い生きものである。
これまで我が家でハエトリグサの餌食になった昆虫たち
ハエトリグサは捕虫して虫の養分を吸い終わるとまた葉が開く。捕虫した虫の種類や大きさにもよるらしいけれど、だいたい10日前後で再び捕虫体制にはいるみたい。
我が家のハエトリグサは、喧嘩両成敗になった羽アリ、カメムシの他、これまで、ザトウムシのような虫を捕虫した形跡もあった。ザトウムシは葉が黒くなることもなかったのでしっかりと養分を吸い取ることに成功したのだろう。
無事に越冬してくれたら来年の春には我が家に来て2年目を迎えるハエトリグサ。この先、どんな虫たちを捕虫するのか。虫には少し可哀想だけれど楽しみである。
越冬できますように。
観察メモ
2021年:羽アリ、カメムシ、ザトウムシ
【おわり】